
できるだけ母乳で育ててみたい、
母乳メインでいきたいという方のために、
分娩施設の選び方についてお伝えします。
ミルクでも良いかなという方には、
あまり参考になりませんので
そのつもりでお読みください。

分娩施設を選ぶときから決まる母乳育児の方向性

私、母乳で育ててみたいと
思ってるんです
母乳育児を
希望されているのですね。
それなら、お産をする施設を
どこにするのか
その選択が大切ですよ。

どんな動物でも、自分の力で自然に産んでそのまま自然に母乳育児をしています。
さて、人間の場合はどうでしょう?

他の動物の場合、産まれたら自分の力で母親のおっぱいまでたどり着き、吸いつくことができます。
人間の場合は、脳が発達して頭が大きくなってしまいました。
そのため、生理的早産と言われる未熟な状態で産まれてくることになりました。
他の動物のように、産まれてすぐに自力で移動しておっぱいに吸いつくということができません。
人間の母親は、産まれた子どもにおっぱいを与えるという本能がほとんど失われています。
何も説明しない状態で、授乳を上手く行える人はほとんどいません。
ですから、お産が終わった後授乳をするためのお手伝いが必要です。
一般の方にはわかりにくいのですが、お産をする施設によって、母乳育児に対する方針や環境はかなり違います。
あまり公にはなっていませんが、施設による母乳率にもかなりの幅があります。
そのため、お産をする施設を決めた時点で母乳育児がスムーズに始められるかどうかが決まってくるのです。

私が産んだところでは
母乳で育てている人が多いですよ

私のところでは
ミルクの人が多いですね
そこをどうやって見極めるのかが
大切なポイントですね。
その方法について
お教えしましょう。

今、お産ができる施設が
減ってきているんです。
どの施設でも
お産ができる数は決まっていて、
その枠を超えてしまうと
お産を受け入れてもらえない
こともあるんです。


えっ
早く決めなきゃいけないのに
どこにしたら良いのか
わからないわ・・・
人気の施設ともなると、予約枠もすぐに埋まってしまいます。
希望する施設で分娩予約をしたいですよね。
そのためには妊娠がわかってからすぐに予約をしないと、お産を受け入れてもらえないこともあります。
分娩予約をするのには分娩予約金が必要となる施設がほとんどです。
ですから、その準備も必要です。
分娩予約金は、施設によって 5万円~20万円 くらいの幅があります。
これは最終的には分娩費用に充当されますが、医学的な問題など回避できない理由でキャンセルになった場合以外は返金されないことが多いです。
つわりの影響で、なかなか思うようににいかないこともあります。
受診したくても、できないということもあります。
じっくり相談したくても、それだけの気力がもてないこともあります。
ですから、早めの準備がお勧めというわけです。
早めに施設が決まっていれば
より安心ですね

ラ・レーチェ・リーグは、母乳育児で育てたいママを支援するためのボランティアのママによって構成されている集まりです。
現役のママが相談に乗ってくれますから、ママの立場からの生の情報を聞くことができるかもしれません。
分娩施設の様々な方針を調べてみよう
今はネットでもいろんな情報が
得られるようになりました。
その情報が正しいかどうかの
判断力が必要です。

最近ではGoogleマップなどの口コミをみると、施設の雰囲気がわかるようになりました。
ただ、書かれる側の立場からすると、事実と違うことが書かれていることがあります。
また、間違った解釈の下に評価されていることもありますので、すべてを鵜呑みにはできません。
どの情報を信じて、どの情報を棄てるのか、そこの判断力は必要です。
施設の方針が一番良くわかるのは、ホームページです。
そこに、施設の方針が反映されていることが多いです。
母乳育児について、
しっかりページをさいて
具体的に記述されている施設なら
まず間違いありませんね

ただ、一言『母乳育児を支援しています』と書かれているだけでは、母乳を推進している施設かどうか、本当のところはわかりません。
母乳が良いということは一般的に知られているため、ミルク寄りの施設であっても、あえて母乳育児を否定するようなことは書かれていないものです。
ミルク缶にも「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」って書いてあるくらいです。
母乳率はとても低いのに、母乳外来をやっている施設もあります。
ですから、直接その施設のスタッフに質問をしてみなければわからないこともあります。
母乳育児に熱心な施設であれば
母乳育児についての電話相談を
受けることも多いため
お電話での問い合わせにも
しっかり対応してもらえることが
多いです。

施設によって、お産の方針はいろいろです。
自然派だったり、無痛推奨だったり。
それも母乳育児に影響しますよ。

分娩の方法によっても、母乳育児がスムーズに始められるかどうかに違いがでてきます。
自然分娩の場合に比べ、計画分娩、無痛分娩、帝王切開の場合は母乳育児の面では不利になります。
それは、授乳開始の時期が遅れたり、ホルモンへの影響がみられたりするためです。
ただ、不利な条件があっても、母乳育児をスムーズに始められるようなサポートが行われていれば、その影響を少なくすることができます。
母乳育児も、無痛分娩もどちらも希望ということもあるかもしれません。
そこは、サポート体制がしっかりしている施設かどうかを調べておきたいところです。
母乳推進の施設であれば
帝王切開になった場合でも
しっかりサポートしてくれます。
早いうちから赤ちゃんとの
触れ合いができて
ママが動けない状態でも、
おっぱいをあげることができます。

これは一般の方にはあまり知られていませんが、施設によって帝王切開率にも違いがあります。
ハイリスクなお産を受け入れている周産期センターレベルのところでは、帝王切開率が高くなるのは致し方ありません。
けれども、診療所レベルの施設で帝王切開率が2割を超えるような場合、何か特別な事情があることもありますので、注意が必要です。
人員不足の施設の場合、
リスク回避のため、
帝王切開の判断が
早めになることもあります。
そういうところは
帝王切開が多いですね。

人員不足の施設では、母乳育児のサポートに時間をかけてもらうのは難しいかもしれません。
母乳育児をサポートするためには、スタッフがじっくりとケアに関わるだけの時間の余裕が必要なのです。
陣痛が全くない状態から人工的にお産を進めていく計画分娩、誘発分娩の場合は陣痛促進剤を使います。
また無痛分娩の場合にも、陣痛が弱くなってしまうため、陣痛促進剤を使うことが多くなります。
陣痛促進剤は陣痛を起こすためのホルモンなのですが、それを使用すると自然に体の中から分泌される内因性のホルモンが少なくなることがわかっています。
そのホルモンは、母乳育児をしていく上でも大切なホルモンなのです。
陣痛促進剤を使用することでお産にかかる時間が短縮でき、体力の消耗を少なくするというメリットも勿論あります。
ただ、陣痛促進剤を多用している施設には注意が必要です。
お産の経過を自然に待つ場合、夜間に産まれることが多いです。
それはどんな動物でも同じです。
人員配置の問題で夜間のお産が少なくなるように
陣痛促進剤を多用する施設があります。
そのような施設では、平日昼間のお産がほとんどです。

母乳を推進しているのはこんな施設

母乳育児のお手伝いをしてくれる施設は
どんなところで見分けたらいいのかしら・・・
母乳育児をしたいのなら、
母児同室
これはもう必須条件ですね。

母乳育児をするためには、赤ちゃんがおっぱいを欲しがったときにその欲求にあわせて好きなだけおっぱいを吸ってもらうことが必要です。
赤ちゃんが泣きだす前にそのサインに気づくためには、母児同室で過ごすのが一番です。
できれば、分娩後できるだけ早めに母児同室を始めることのできる施設がおすすめです。
また昼間だけ同室というのではなく、夜間も24時間ずっと同室でいられる施設の方が、母乳育児をスムーズに始めることができます。
生まれたての赤ちゃんは基本夜行性で、おっぱいを増やすためのホルモンも夜間に分泌が高まります。
夜間の同室なくしては、スムーズな母乳育児は始まりません。

ママと一緒にいられるのって
うれしいなぁ
夜の授乳で疲れた場合は、お昼間に赤ちゃんを預ってもらい休む方法もあります。
母児同室の時間も、ママのご希望に合わせてフレキシブルに調節可能なところが疲れた時にも安心ですね。
入院中は少し大変かもしれませんが、退院までに赤ちゃんとのリズムがわかってくるため、退院後の育児への移行が不安なくスムーズにいくのが母児同室の施設です。
生まれたての赤ちゃんは、ホルモンの影響もあり覚醒状態が2時間くらい続きます。
赤ちゃんの感受性の高いこの時間は、母子にとっての絆をつくりあげるとても大切な時間です。
赤ちゃんは、ママと離れていると泣き続けますが、腹ばいにしてママの胸の上に乗せておくと泣きやみ、穏やかにしています。
肌と肌とを合わせて赤ちゃんとママが触れ合うことで、ストレスも少なくなり胎外生活への移行もスムーズです。
また、赤ちゃんがこの時間に経験したにおいは、強く記憶に残るとも言われています。
そのにおいを頼りに、赤ちゃんはおっぱいを探してママの胸の上をよじ登っていきます。
そして時間をかけておっぱいに吸いつくのです。
この経験をすることで、その後の母乳育児をスムーズに始めることができます。
このような理由で、生まれてすぐに肌と肌との触れ合いを大切にしてくれる施設を選ぶのがおすすめです。
国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)は、母乳育児がうまくいくための支援に必要な一定水準以上の
技術・知識・心構えを持つヘルスケア提供者です。
IBCLCは、エビデンスに基づいた母乳育児支援を行うことができますから、IBCLCのいる施設は、安心して母乳育児についての支援を受け相談することができる施設です。
ただ、日本では IBCLC の資格を持つ人は、まだそんなに多くはありません。
WHO (世界保健機関) と UNICEF (国連児童基金) は、
母乳育児を推進するために「母乳育児がうまくいくための10のステップ」という勧告を出しています。
この10ステップでは、分娩する施設側がどのようにして母乳育児をしやすくするための環境を整えるかということが示されています。
そして、その10ステップを実践している施設を「赤ちゃんにやさしい病院」Baby Friendly Hospital(BFH)として認定しているのです。
日本では、ユニセフから委託を受けて「日本母乳の会」がその認定をしています。
赤ちゃんにやさしい病院に認定された場合、その後も環境が維持されているかどうかを調査されて認定継続されていきます。
ですから、「赤ちゃんにやさしい病院」に認定されている施設を選んでおけば、母乳育児ができるようなサポートを、しっかりしてもらえるでしょう。
1989年に、WHO(世界保健機関)/UNICEF(国連児童基金)から共同声明が出されました。
これが母乳育児成功のための 10 カ条です。
これは、産科医療施設が母乳育児を推進していくための方法をガイドラインにしたものです。
この10カ条は2018年に改訂され、母乳育児がうまくいくための10のステップとして母乳育児を推進していく施設の大切な指針となっています。
その内容については、リンクをご覧ください。
赤ちゃんにやさしい病院は
母乳育児がうまくいくための
10ステップが
しっかり守られているんです。

10ステップにおいて施設の必須の要件として、「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」と世界保健総会の関連決議を完全に順守する」ということが一番最初に書かれています。

難しくてよくわからないわ・・・
これはママが安心して母乳育児ができる環境にいられるように
ミルクメーカーなどの商業戦略から守るための国際基準です。
知らないうちに、母乳育児を阻害されないように
赤ちゃんとママを守ってくれているんですね。

母乳育児をスムーズに始めていくためには、赤ちゃんが生まれてからできるだけ早いうちに、頻繁に好きなだけおっぱいを吸ってもらうことが必要です。
そうするとホルモンが働いて、母乳は自然と湧いてくる仕組みがあるのです。
早めから不必要なミルクを赤ちゃんに与えてしまうことでおっぱいを吸う刺激が不足してしまうと、なかなか母乳は湧いてきません。
「私は母乳があまり出ない体質なんだわ」
そう思い込んで、母乳を諦めてしまうママもいます。
そうじゃないんです。
それは、ママの置かれた環境の影響なのです。
10ステップを遵守する、赤ちゃんにやさしい病院なら母乳が自然に湧いてくる仕組みを上手く引き出すサポートをしてくれるのです。
赤ちゃんにやさしい病院が近くになかったり、条件が合わない場合でも、
それに近い方針の施設を選ぶことで母乳育児はしやすくなりますよ。

お近くに『赤ちゃんにやさしい病院』がなかったり、IBCLCもいない場合でもまだ諦めないでくださいね。
母乳育児に理解のあるスタッフがいる場合、バースプランを受け入れてもらえれば自分の希望の環境をお願いすることができます。

バースプランは
どんな風に書いたらいいの?
バースプランは、簡潔に項目ごとに分けて書くと良いでしょう。
チェックリストにすると、可能なもの、不可能なものがわかりやすいです。
また、条件付きになることもありますから、施設側のコメントが記入できるようになっていると良いですね。

母乳育児をしたい場合、10ステップに書かれている内容を盛り込んでおくのがおすすめです。
バースプランの具体的な書き方については、また別の項でお伝えします。
まずは、バースプランを受け入れてもらえるだけの柔軟さがその施設にあるかどうかが問題です。
施設によって、入院日数にも違いがあります。
一般的には、お産の日から0日目と数えて、4日目、5日目退院の施設が多いです。
初めてのお産の場合、授乳に慣れるのに時間がかかります。
不安な方は入院日数が長めのところを選ぶのが良いかもしれません。

また、母乳の分泌が軌道に乗らないうちに退院になることもありますから、その後のフォロー体制がしっかりしているかどうかは大切なポイントです。
母乳外来や育児相談があり、平日にいつでも予約がとれるようになっていると安心です。
また、1カ月健診になる前に、赤ちゃんの体重のチェックや相談に応じてもらえる2週間健診がある施設だとより安心です。
心配事があるときに、すぐに相談に乗ってもらえるような電話相談もあればとても安心できますね。
まとめ
以上、分娩施設の選び方についてお伝えしてきました。
すべての条件を満たす施設は、なかなかみつからないかもしれません。
でもまだ諦めるのは早いです。
どんな施設であっても、母乳育児をしたいんだというママの強い気持ちと母乳育児をスムーズにすすめるためのコツがわかっていれば大丈夫です。
一番大切なのは、『母乳育児をしたい』という
あなたのお気持ちなのです。


施設にお任せというのではなく
私の希望を
しっかり伝えることが大切なんですね。
あなたが求めれば、きっとそれを理解してくれるスタッフはいるはずです。
母乳育児をする環境が整った施設であれば、より母乳育児のスタートはスムーズにいくでしょう。
あなたにとって、ご希望が叶えられるような施設に出会えると良いですね。
良いところがみつかるよう
応援していますよ。
